先日、「デザインの先生」という企画展を訪れた。そこで「Less, but better」という言葉があり、とても印象に残ったので紹介したい。
Less, but better とは
「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」は、ブラウン社のプロダクトデザイナーであるディーター・ラムス(Dieter Rams)が提唱したデザイン哲学の一つだ。 量を減らし、その分 質を徹底的に高めるという考え方であり、ただシンプルにするのではなく本当に価値のあるものだけを残すという哲学である。
彼の掲げた「良いデザインの10原則」の中核にある姿勢が「Less, but better」であり、現代のデザインやプロダクト開発においても重要な指針となっている。
良いデザインの10の原則
ディーター・ラムスは、混然とした世界の中で自らのデザインのあり方を問い直し、その答えとして「良いデザインの10の原則」をまとめた。
- Good design is innovative(良いデザインは革新的)
- Good design makes a product useful(良いデザインは実用的)
- Good design is aesthetic(良いデザインは美的)
- Good design makes a product understandable(良いデザインは分かりやすい)
- Good design is unobtrusive(良いデザインは謙虚)
- Good design is honest(良いデザインは誠実)
- Good design is long-lasting(良いデザインは長持ちする)
- Good design is thorough down to the last detail(良いデザインは細部まで完璧)
- Good design is environmentally-friendly(良いデザインは環境にやさしい)
- Good design is as little design as possible(良いデザインは純粋で簡素)
デザインにとどまらない
「Less, but better」は「少ない」ことを追求するが、それは決して「手抜き」ではない。むしろ、不要なものを削ぎ落とすことで、本質的な価値を高めることを目指している。質の向上にこそ焦点を当て、真に重要な要素に集中することで、より良い結果を生み出すことができる。
これは単なるデザイン論ではなく、さまざまな分野に応用できる普遍的な思想であり、以前から私自身が大切にしてきた考え方でもあった。
例えば、プロダクト設計においては、機能を次々と追加していくことよりも、まず本質的な価値を定めることが重要になると思う。その上で、何を実装し、何を実装しないかを判断していくことが、使い手にとって理解しやすく、信頼できるプロダクトへとつながっていくと考える。
また、仕事や学習の文脈でも同様だ。あれもこれもと手を広げるより、今取り組むべき重要な一点を見極め、そこに集中する方が、深い理解や確かな成長につながると思う。
おわりに
「Less, but better」という言葉は、デザインの世界にとどまらず、自分の行動や選択を静かに問い直してくれる言葉だと感じた。
何かを増やすことは簡単だが、本当に大切なものだけを残すことは難しい。だからこそ、立ち止まって考え、選び続ける姿勢そのものに価値があるのだと思う。 これからも、「より少なく、しかしより良く」を意識しながら、自分なりのものづくりや学びを積み重ねていきたい。